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2014年 07月 05日
いやはや、書きかけて幾星霜(^^;) * 『「赤毛のアン」の秘密』(岩波現代文庫/2014)を読んだ。フェミズムの旗手・小倉千加子がどんな秘密を解き明かすのかと期待したが、アンというより作者モンゴメリの批判的評伝で、成長するための「父殺し」やら時代の規範から外れないための「マシュウ殺害(!)」やら定型的な心理学的分析満載で辟易した。だいたいこの著者は、「女の道」を外れなかったために通俗作家にしかなれなかったモンゴメリも、女こどもしか喜ばない『赤毛のアン』も嫌いなのだ。冒頭部でプリンスエドワード島も訪ねているが、だだっぴろいのっぺらぼうの風景に「退屈を超えて憂鬱になって」いる。その理由を考えて、空間を区切るものが何もないからだと気づく。ガードレールがない、自動販売機もない、と言っている。う〜ん、都会人だなあ。 だからこの著者は『赤毛のアン』という作品そのものに興味があるわけではなく、この本がなぜこんなにも長く日本の少女たちに(日本の少女たちだけに、と言っている)人気があるのかに興味があり、この作品に関連づけて、日本人女性の「特異性」を論じているのである。そして『赤毛のアン』は、経済成長期に二重労働で貢献する日本人女性を育み、「日本人女性のあり方に関して国策と歩を共に」したとまで言うのである。ふ〜ん、そういう深読みもできるのかと面白かったが、実際、この本にそれほどの影響力があっただろうか? 戦後から1980年代半ばまで少女たちに圧倒的に読まれてきたというのは、少女を主人公にした冒険と成長の物語がほとんどなかったからではないのか? 著者が軽蔑をこめて言う「アン・フリーク」は、ただロマンチックなものが好きな夢見る少女ではなく、頭がよくてとくべつ感受性が鋭く、現状に何かしら相容れないものを感じている少女のように思う。私はぼんやりした子どもだったから、ふつうに面白く読んだが、こういう友だちがそばにいたらちょっとやかましいとも思ったような気がする。10数年前にPEIに行くにあたって読み直してみたとき、こんなに健気ないじらしい話だったのかと驚いた。不幸な育ちかたをしたとくべつ鋭い感受性の女の子が、空想することによってなんとか生き伸びていこうとする、ほとんど痛ましいような物語だった。それに励まされ目を開かれた読者も多かったのだと思う。 私がいた高校に、近くの国立大学から助手だったかオーバードクターだったかの非常勤講師が生物学を教えにきていた。その彼が学期半ばでカナダに留学することになり、クラスでささやかな送別会が開かれた。そのときクラス委員をしていた女子生徒が手を挙げて「お願いがあります」と言った。そして「カナダに行ったらぜひプリンスエドワード島に行って、赤い風船を飛ばしてください」と言ったのだ。ふ〜ん、そういうことを考えるのかと私は感心した。真面目一本槍の講師は、手帳を出して「プリンスエドワード島、だな……赤い風船、と……」とメモしていたが、その意味はわからなかったと思う。 彼女は明らかに「アン・フリーク」だったのだ。優秀でとくべつ感受性が鋭く、周囲のぼんやりしたクラスメートにはなじめない、浮いたものを感じていたのだろうと思う。彼はPEIに行っただろうか? 留学生活は忙しいし、同じ国内で3時間も時差があるような地では難しかったかもしれない。その後彼女は、一時期とても話題になった新興宗教のほうに行ったと、風のたよりに聞いた。
by Kcouscous
| 2014-07-05 09:43
| 製本/本
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Comments(16)
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nabetsuma at 2014-07-05 21:00
おおツ!
貴重な、「書きかけ」だ!!!
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Kcouscous at 2014-07-05 21:25
*nabetsumaさん
あはっ、まだ書きかけてもいなかった(^^;)
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とっしゅ
at 2014-07-13 11:49
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おや珍しい、書きかけで放置だ。
閑話本題。図書館で、昔読んだのか読んでないのか、もう40年くらい前の新書、河野一郎さんの『翻訳上達法』を見つけて読みました。ひどい誤訳例がいっぱい書いてあり、どれもこれも、私が指さされているような気分。巻末のテストをやってみると、結果は「プロにはほど遠い…」と。ま、言われなくてもわかってますけどね(^ ^;)。
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Kcouscous at 2014-07-14 23:19
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とっしゅ
at 2014-07-18 10:03
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御意!
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nabetsuma at 2014-07-18 19:21
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ehonblog at 2014-07-19 01:11
はじめまして。気長にお待ちしてます。
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Kcouscous at 2014-07-19 22:22
*とっしゅさん
まあね。
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Kcouscous at 2014-07-19 22:25
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Kcouscous at 2014-07-19 22:32
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daikatoti at 2014-07-20 04:34
北海道に行った時、最初は広々とした景色に感動したけど、どこまで行っても野原で3日も経つといやになりました。
飛行機で大阪に帰って来た時バスの車窓から眺めるゴミゴミした街にホッとしました。 そういう感じかなぁ。自分のそういう感覚にもちょっと嫌になりましたが^ ^…
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とっしゅ
at 2014-07-20 22:51
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小倉千加子の…とあるので、少し腰が引けていたのですが、むしろ批判的な評だったので安心したりして。私もあの人の書きっぷりには辟易組なんです。全身でドヤ顔して心理学振り回すのはやめてほしいと思ったりも…。
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Kcouscous at 2014-07-20 22:55
*totiさん
この著者は、何も視界を遮るものがない、ということは自分の身体の回りに何も防壁がない、自分はまったく無防備だと感じて不安に陥っているようなのですが、それとは違う感じ? いずれにしろ、totiさんも都会人だなあ。
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Kcouscous at 2014-07-20 23:01
*とっしゅさん
確かに、ちょっと頭かたくて、関係付けが強引すぎるかも〜と思いました。
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at 2014-07-23 17:22
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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Kcouscous at 2014-07-23 22:45
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