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2016年 07月 18日
光原社は仙台にも支店があるが、盛岡本店は敷地内の他の施設とともに独特な雰囲気を持っている。庭の奥に小さな「可否館」があり、おいしいコーヒーで有名なので、まずそこでひと休みする。もちろん、くるみクッキーも注文する。これはカラメルソースをからめたくるみがみっしりとはさまれていて、ものすご〜〜くおいしいのだ。忘れないうちにおみやげに一箱買う。箱のふたの絵はさる(忘れた)染色作家の型を使ってスタッフが一つひとつシルクスクリーンで刷っているそうだ。包み紙は柚木沙弥郎だし、のし紙は川上澄生だし、まったく光原社は何もかもが念入りなんである。 店の一階にも二階にも別館にも、事情が許せば買いたいものは山ほどあったが、もはや事情は許さず、もうカサばるものは買わないと決めたので、5寸の「手打ち本種子島鋏」だけ買う。美しか! ポルトガル伝来の種子島銃はもちろん廃れたが、その鍛工技術をいまに継承しているのが、この鋏なんだそうだ。切れ味鋭い。ふつうの文房具の鋏は刃先が丸いのが多いが、これは刃先が尖っているので、こまかな作業に向いている。たいして作業もしないのに道具好き。 さて物欲もささやかに満たされたので、歩いて10分ほどの盛岡駅へと戻る。 #
by Kcouscous
| 2016-07-18 11:13
| 旅
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2016年 07月 16日
さて盛岡冷麺を食べてから、<イーハトーヴ>材木町方面へ向かう。ここを流れているのは北上川。盛岡市内には三本の川が流れている。というか、流れは一つだが流れる場所によって名前が変わる。盛岡市民の生活は川と橋を中心に動いているようだ。 材木町の通りをぶらぶら歩いていくと賢治さんがいた。 私の宮沢賢治のイメージからすると、ちょっとおしゃれ過ぎる賢治さんだ。 ↓この賢治像もちょっとちがう。 まあ、ないものねだり(?)。右の石碑には「ああマヂエル様 どうか憎むことのできない敵を殺さないでいいように早くこの世界がなりますように、そのためならば、わたくしのからだなどは、何べん引き裂かれてもかまいません」という『烏の北斗七星』からの一文が刻まれている。その横に「注文の多い料理店出版の地 大正十三年」の碑。生前出版された賢治の著作はたったの二冊で、そのうち『春と修羅』は自費出版、もう一冊の『注文の多い料理店』を出版したのが、盛岡高等農林学校(現岩手大学農学部)時代の友人・及川四郎が興した、ここ光原社だった。 光原社についてはこの本に詳しいが、その一冊に賭けて友人が興した出版社に賢治が命名した。いかにもきらきらした原っぱの鹿踊りが見えてきそうな名前だ。看板の字は棟方志功だそう。しかしこの本はまったく売れなかったので、資金繰りに困った友人は南部鉄瓶や漆器を売り始めた。その過程で柳宗悦や河井寛次郎、濱田庄司と知り合い、彼らの民藝運動に共鳴する。そして光原社は現在に至る民芸品店になった。 #
by Kcouscous
| 2016-07-16 16:10
| 旅
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2016年 07月 14日
知人の知人が協力した展覧会を岩手県立美術館でやっているというので、先日ぶらっと散歩気分で出かけた。 盛岡駅の西口を出ると、人口30万の都市というのに5分も歩かないうちにこんな景色に出くわす。無粋な護岸工事などまったくしていない。繁り放題の草木の圧倒的な緑。この先にりっぱな美術館がある。雫石川を渡ってくる風が心地よかった。 展覧会についてはほとんど前知識がなかったのだが、これが予想外に面白かった。映画誕生120年記念「野口久光シネマ・グラフィックス展」。野口久光は戦前・戦後の映画の黄金時代、日本に洋画を配給していた東和商事(のちの東宝東和)のデザイン部で30年間にわたって1000枚以上の映画ポスターを描いた人で、そのポスターと原画、直筆の映画スターのポートレートとレコードジャケットなどを集めた展覧会。 俗っぽいへたくそな絵を評してよく「銭湯の絵か映画看板のよう」と言ったりするが、この人の鉛筆デッサン、水彩、油彩の絵は正当派で、本国のポスターよりずっとしゃれているものがたくさんあった。東京美術学校(いまの芸大)出身ということだが、この人自身、映画が好きで好きでたまらなかったんだろうと感じさせるような、作品の雰囲気がよく出ているポスターだった。『大人は判ってくれない』のトリュフォー監督はオリジナルポスターよりこの日本版のポスターをいたく気に入り、その後の自分の2作品に登場させているという。 いまと違って戦前戦後の時期に日本で上映されていた洋画のほとんどはヨーロッパ映画で、どれもこれもいい作品ばかりだったんだなあと感心した。むかし名画座あたりにリバイバルでかかっていた映画のポスターのほとんどぜんぶを、この人ひとりが描いていたことに驚く。そういう作品群の予告編だけをつないだビデオを会場内で上映していて楽しそうだったが、ぜんぶ見ていると日が暮れてしまうので、ふたたび駅に戻り、今度は東口に出て盛岡名物の冷麺を食べる。旨し! #
by Kcouscous
| 2016-07-14 22:06
| 旅
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2016年 07月 09日
このところ着ている麻のシャツ。 リバティ・プリントを使用したユニクロのシャツで、女ものが出ていないから男ものを買って、裾を10cmほど切った。先日ちらりと見た日曜美術館に横尾忠則が出ていて、これと同じシャツを着ていたのでへぇと思った。天下の横尾忠則がユニクロのシャツを着てNHKのインタビューを受けている図っていうのは、ちょっとよかった。 *今日の一冊 連鎖はさらに続いて、 伊藤比呂美『父の生きる』(光文社文庫/2016) カリフォルニアの自宅と熊本の実家を一カ月毎に往復して父親を介護した詩人の記録。介護といっても自分が熊本にいられないときに父が独りで暮らせるようにサポートを手配し、カリフォルニアから毎日電話をかけ、熊本に帰って父といっしょにテレビを見ることだったと本人は書いているが、その生活はすさまじい。毎日、ときには日に何度もアメリカから電話をかけているのがすごいが、今日は電話したくない、愚痴を聞きたくない、うっとおしい、もううんざりだと思っても、自分しか頼る者がいない親から離れている負い目があって、やっぱり電話せずにはいられないのだ。そういう親子の情はアメリカ人の夫には理解されない。 この本の大部分はその電話での父親との会話で、詩人のことばで書き留められたその会話がしみじみと面白い。このお父さんはなかなか面白い人で、「退屈だよ。ほんとに退屈だ。これで死んだら、死因は『退屈』なんて書かれちゃう」と言ったりするのだが、パーキンソン病を患っていて、老いと衰えは容赦なく近づき、そう遠くない死を控えた独居老人の不安と孤独と寂しさが会話からじわじわと立ちのぼってくる。それを海の向こうで聞いていなければならない一人娘のせつなさもひたひたと伝わってくるのだ。人の「生きる」というのは大変なことだなあ、しかしそれは実に多くのことを教えるものなんだなあとしみじみ思った。全編しみじみの本。 #
by Kcouscous
| 2016-07-09 16:14
| 製本/本
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2016年 07月 02日
最近、なんとなく連鎖的に読んだ本。 『食といのち』辰巳芳子(文春文庫/2014) 辰巳芳子と、生物学者の福岡伸一、看護学研究所長の川嶋みどり、小児科医の細谷亮太、倫理学者の竹内周一との対談集。いつものようにお説教臭くはなく(^^;)、病人と死期に近い人においしいものを食べさせたいと願う辰巳さんが、各界の専門家と人のいのちについて考えている。 『死を想う』石牟礼道子・伊藤比呂美(平凡社新書/2007) カリフォルニアの自宅と熊本の実家を一カ月おきに往復して両親の介護をしている詩人の伊藤比呂実が、人が「死ぬ」とはどういうことかをどうしても知りたくて、ほかの人にはうかつに聞けないが石牟礼さんならだいじょうぶだろうと、パーキンソン病で不自由な暮らしをしている石牟礼道子にしつこくしつこく聞いている面白い対談集。 そういえば、最近人は「死ぬ」という言葉を使わなくなった。「死」という言葉を意識的に避けているのかどうか、上の本でも辰巳芳子は「いのちがしずまる人」という言い方をしている。昨日は「私が亡くなったら残された人は……」と言った人がいてびっくりした。猫や「ゾウの花子が亡くなった」という言い方にも違和感があるが、「亡くなる」というのは自分についても使うんだろうか? この本ではふたりともたっぷり死ぬ、死ぬという言葉を使って、死を真っ向から考えていて小気味いい。読んでみてわかったことは、結局、人は死んでみないとわからないということだ。『梁塵秘抄』の話がくり返し出てくるので、この本も読んでみなければ。 『をみなごのための室生家の料理集』室生洲々子(亀鳴屋/2016) 室生犀星の孫による、室生家の日常食のレシピ集。表紙の犀星の絵と手書き文字(武藤良子)と造本(糸かがりの列帖装)に惹かれて買ったが、中身はゆるい。 材料に鯖の缶詰とあるのに、作り方には鮭をほぐして入れるとあったり、玉子と卵が混在しているが、まあどっちでもいいということだろう。お酒、お砂糖、お塩、お醤油、お茄子、おそうめん、お鍋、お豆腐、お味噌という表現もかったるいが、いかにもつつましい良いお宅の家庭料理という味は出ているかもしれない。文豪の家庭でも、けっこうふつうのシンプルなものを食べていたんだなという感想。 『食べごしらえ おままごと』石牟礼道子(中公文庫/2012) すごく深い。人は食べるものでできている、ということが強烈に胸に迫る本。その人の日々の暮らしでも生き方でも考え方でも、他の人や世の中との関わり方でも死に方でも。 今日いちばんのお薦め。 #
by Kcouscous
| 2016-07-02 12:25
| 製本/本
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